徳島県西部に位置する日本三大秘境の祖谷渓谷は随分長い間、私たちの次に行きたい訪問地リストに載ったままでした。最近になって遂に訪問できたのですが長年の期待を裏切らない素晴らしいところでした!
険しい山間の谷間にあり、狭くて曲がりくねった道路しか通っていない祖谷渓谷は人里離れた日本最後の秘境だともっぱらの評判です。源平の合戦に敗れ落ち延びた平家の一族が約900年前に定住した地で、子孫の方々が今も暮らしています。
山間の静かな地域ですから見どころを巡るにはやはり車がお勧めです。でも車を運転しなかったり、車をお持ちでない方も公共交通機関を利用すれば観光名所を巡れます。私たちは祖谷渓谷の見所をゆっくり3日間にかけて訪ねました。ここからは私たちのお気に入りのスポットをご紹介します。
香川県側から徳島県の祖谷(いや)地方を訪問した時に、玄関口になる小歩危峡と大歩危峡は、吉野川沿いに隣り合って並ぶ2つの峡谷です。吉野川沿いの道路には駐車場があまりありません。ですから、祖谷にある2つの道の駅に車を停めて歩いてゆったり見学するのがおすすめです。渓谷の大パノラマを間近で見たい方には、吉野川を下る遊覧船の船旅を試してみてください。
祖谷のかずら橋は日本三大奇橋の1つで、国の重要文化財にも指定されています。その昔、祖谷の住民は山間の祖谷と他の地域を野生のシラクチカズラで編んだ吊り橋でつないでいました。落ちのびた平家の人々が襲われた時の用心で橋を落として渓谷に入れなくするため、木のつるで吊り橋を掛けていざというには落とせるようにしたという伝説が残っています。
祖谷の渓谷にはかつては13の吊り橋が掛けられていました。今では祖谷のかずら橋を含めて3つの吊り橋しか残っていません。祖谷のかずら橋の全長は約長45mで川から15mの高さに架けられています。安全上の理由からすれ違うことはできず、一方向からしか渡れません。橋は3年ごとに架け替えられ、つるの中には金属製のケーブルが入っていて、国の安全基準を満たしています。
通行料金550円を払ってかずら橋を渡った後は、近くの滝を散策するのも楽しいです。かずら橋は祖谷で一番人気の観光スポットです。人混みを避けたい方は、朝7時からの開通時間直後を狙ってみてはいかがでしょうか。日本一怖い橋「祖谷のかずら橋」に行った時の動画はこちらです。
急峻な渓谷沿いに建つ日本三大秘湯を持つ祖谷温泉は、日本有数の絶景が堪能できる温泉が魅力です。祖谷に実際に行く前から、インスタグラムでこの絶景の中の温泉の写真を見て、祖谷に着いたら絶対に行こう!と決めていました。
温泉を利用するのはホテルの宿泊者がほとんどですが、入湯料1700円でホテルに泊まらなくても温泉に入れます。 温泉まではホテル内のケーブルカーで5分ほど山の中腹を下らなくてはなりません。1980年代は2年間にわたってケーブルカーが運行してなかったので、川沿いの温泉に入る為には、ホテルから山道を30分ほど下らなくてはなりませんでした。
露天風呂は「渓谷の湯」と「せせらぎの湯」の2つで、日替わりで男湯と女湯に入れ替えられています。貸切の温泉も利用できます。かけ流し湯なので温泉ではシャンプーや石鹸は使えません。ケーブルカーでホテルに戻った後は、ホテル内の温泉も利用できシャンプーや石鹸も使うことができます。
祖谷渓谷の東側の山中に位置する落合集落は日本一急斜面にある村というので有名です。その集落の中には江戸時代からの民家が残り、伝統的な日本の村の風景がまるで絵を書いたかのように写し出された美しい村。村の中を車で走るのはあまりおすすめしません。その代わりに村の反対側の丘を登ってみてください。美しい村の景色を一望できる素晴らしい眺めの展望台があります。
祖谷温泉の近く、谷間を蛇行し強い風が吹く道沿いの断崖に、ベルギーのブリュッセルの小便小僧に似た小さな小便小僧の像が立っています。伝説によると旅人や地元の若者は度胸試しに山の上の断崖から小便をしていたと言います。小便小僧の像は若者に危ない事をさせないようにと立てられたとのことで、地元の民間伝承では勇気の象徴だそうです。
日本全国の農村部では人口減少が進んでいて、廃村になってしまう村も少なくありません。祖谷の西に位置する名頃集落は、160体以上の手作りかかしが村中に展示されていることで世界的に有名になりました。綾野月美さんがかかし作りを始めたのは、父の介護のために長年住んでいた大阪を離れて帰郷したのがきっかけです。子供の頃に住んでいた集落の人口は当時は300人くらいだったのが、今では20人ほどしか住んでおらず、多くの人が亡くなり他所に転居しています。
お酒を飲みながら談笑するのが好きだった人や、いつもバス停でバスを待っていた人など、かかしたちの多くがかつての集落の住人をモチーフにしています。訪れた人の感想はそれぞれ様々です。私たちはかかしたちを見ながら集落のかつての賑わいを想像して、なんとなく寂しい気持ちになりました。
標高1955mの剣山は西日本で二番目の高山で日本百名山の一つにも数えられています。剣に似た山頂から剣山と呼ばれるようになりました。ハイキングコースとしてはそれほど難易度は高くなく、ふもとの駐車場から1時間ほどで山頂まで登れます。4月から11月までの期間中は、山頂まで30分ほどの地点と駐車場を結ぶリフトが運行されています。山頂には遊歩道やベンチがあり下山する前にゆったりとした気分で山頂からの絶景が楽しめます。冬季は山頂付近で積雪することもありますので、スノーシューズを着用しての登山をお勧めします。